まさか自分が難病診断を受けるなんて
この記事を読んでくださる方の中には、【間葉性異形成胎盤】と診断された、もしくはお母さま、お子様のいずれかに何らかの異常があると診断をされた方がいらっしゃるかもしれません。
私は妊娠20週で【間葉性異形成胎盤】の所見があると診断され、最悪死産になる可能性もあると医師に告げられました
診断を受けたときは、頭が真っ白で、この聞きなれない病名を隅々まで検索しました。ただこの病気は症例が少なく、検索でヒットした数少ない研究論文を見ても、「死産」「発育不全」「障害」など見たくもない言葉ばかりが並んでいました。
どこかに安心材料を求めていたのに、逆に不安を煽るような情報ばかりでした。
幸いにもその後39週で通常分娩で出産、現時点で8か月の娘には何の異常も見られず健康に成長しています。
同じような診断を受けて不安を感じている方に向けて、私の経験談を「1事例」としてお届けできればと思います。
間葉性異形成胎盤(PMD)とは
※ 病気自体については他サイトでも説明されているものが多いので、医療文献や病院の先生のお話をもとに、あくまで簡潔にわかりやすい言葉で記載させて頂きます。
※参考:
その他|間葉性異形成胎盤(平成23年度) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
間葉性異形成胎盤の臨床像 【不明な部分が多い胎盤の異常で,臨床診断基準と分子遺伝学的診断法の確立が急務】|Web医事新報|日本医事新報社 (jmedj.co.jp)
胎盤の形態異常である
本来は均質である胎盤が、何らかの理由でチーズのように穴ぼこ状になってしまう病気です。また胎盤自体が肥大している場合が多いです。胎盤は胎児への栄養の供給源ですが、胎盤の機能低下により胎児に影響が出る可能性があると言われています。
国内の症例から、20%にBeckwith-Wiedemann症候群(BWS)という遺伝性疾患を発症することから、遺伝上の変異が関与しているのではという説があります。また女児の妊娠に伴うことが多いというデータがあります(筆者も女児を妊娠し発症)。
BWSの発症以外では、17.8%が胎児死亡、75%が早産、78.4%が低出生体重児とのデータがあります。ただし国内の症例の47例の結果であるため、母数としてはまだまだ少ないのでは、というのが筆者の所感です。(筆者は予定日の5日前に、2700gの女児を出産)
また妊娠高血圧を発症する場合も多いと医師に言われました。(筆者も出産前は血圧が高め)そもそも妊娠高血圧症候群発症の理由の1つとして、何らかの理由で母体から胎児にわたる栄養が足りなくなり、栄養を届けるために母体が血液をどんどん胎児に送り込むため血圧が上がるという説があります。胎盤は胎児に栄養を届ける最重要器官であるため、胎盤異常が原因で血圧が上がるのは理にかなっていると思います。
・ 母体に症状はなく、胎児の発育に影響が出る場合がある
・ 早産や発育不全、遺伝疾患などの発症データがあるが、まだ症例は少ない
非常に稀な病気であり未だ不明な点が多い
発症は妊娠全体の0.02%と推定されている稀な病気で、症例数も少ないため未だ不明な部分の多い病気。原因不明、治療法も無し。一度PMDを発症した母体が再度妊娠した時の再発の可能性も、否定できないと医師から告げられました。
診断を受けてから出産まで
20週の超音波スクリーニング検査で異常の指摘
私自身の病気発覚から現在に至るまでの経緯をご説明します。
心拍確認から17週の検診までは何も以上なく、胎児も元気だと診断されてました。その後20週の超音波スクリーニング検査で、赤ちゃん自体は臓器や血流など含め異常はないが、胎盤の形が少し気になる…(間葉性異形成胎盤の所見あり)と告げられました。この時点では「間葉??胎盤??なんですかそれ?」状態。胎盤の形が変わっているだけで赤ちゃんが元気なら大丈夫なのでは?と楽観的に考えていました。医師からは、超音波エコーだけでは判断が難しいのでMRI検査をしましょうとその場で予約だけ済ませ、帰宅しました。
27週MRI検査の結果
その後一生懸命言われた病名を思い出し、web検索をしました。出てきた情報は上述の通り。「死産」「発育不全」「遺伝疾患」。見たくもない言葉がたくさん並んでいました。
稀な病気のためweb上でも情報がとても少なく、ヒットした記事は片っ端から読みました。その中で同じ病気を発症し、無事に出産まで至った方のブログを見つけ、その話を心の支えに日々過ごしました。
生まれて初めてのMRI検査、ドラマで見たことのある白い大きな機械に入り、「ゴー」「ピコピコ」という音を聞きながら、「検査の結果、異常はありませんでした」と言われることをただただ願っていました。検査の最中もおなかの中の赤ちゃんは元気に中からおなかを蹴飛ばし、MRIの画像で赤ちゃんがブレちゃうんじゃ?なんていらない心配をして過ごしていました。
その後MRIの診断結果ですが、エコーで見た通りの胎盤の形態異常がMRIの画像でも見られた、というのが結果で、病気を確定するものではないが、病気の所見がある、というのが結論でした。(まあ前回と同じ結果ですよね…)この時初めて医師から、「最悪の場合死産もあり得る」との言葉がありました。なので、もし何か変わった点があればすぐ連絡をください、と。ただ、胎児自体は元気で異常はないというのが唯一の救いでした。
もう原因不明で、治療法もないんじゃ、赤ちゃんを信じるしかない。というのがこの時の心境です。胎盤の機能が落ちているのだから、少しでも赤ちゃんに栄養が届くように、と、和食中心の献立、定期的な運動、ストレスを溜めない生活を心がけていました。(これは医師に言われたわけでもなく、ただ単に自分で決めていたことです。)「病は気から」という言葉があります。自分と赤ちゃんを最後まで信じよう、と心に決めた時期でした。
39週検査入院からのスピード出産
上述の通り、妊娠高血圧の併発の可能性があったため、医師の指示で血圧計を購入し、毎日血圧の測定をしていました。そして39週目の某日、この日は定期健診の日でした。どうも夜中から生理痛のような痛みが続いており、測ってみると10分間隔。「陣痛?いやまさか」と痛みに耐えて明け方6時、下着に軽い出血。痛みの感覚は6-8分。でもまだ耐えれる。どうせ今日定期健診だし。と痛みに耐えながら診察へ。すると、子宮口はまだ1cmくらいですが、かなり内壁が薄くなってきているので、お産は近いかもしれません。と。普通であれば帰宅して様子見しますが、血圧も少し高めで羊水も減ってきているし、胎盤異常の件もあるので、ご希望でしたらこのまま検査入院という形で入院してもいいですよ?
この医師の一言がなかったら、大変なことになっていたかもしれません。というのも、この後入院をするため病棟に移った後、あれよあれよという間にお産が進み、4時間後には元気な赤ちゃんを出産していたのですから。
(出産体験記は別途まとめて記事にしようと思います)
胎盤の病理検査の結果
産後胎盤は病理検査に回され、後日一か月検診の際に、その結果を聞きにいきました。結果、やはり間葉性異形成胎盤であったようです。ただ胎盤の半分は健康な形状をしていたということでした。幸い胎児に大きな影響がなかったのは、健康な半分の胎盤がしっかりと役目を果たしてくれたからなのかもしれない、とのことでした。
産後~現在8か月までの様子
産後~退院
2700gで出産、先天性代謝異常検査、問題なし。新生児聴覚検査、問題なし。
1か月検診
3800g、健康で特に指摘無し。モビールをよく追視している。
3~4か月検診
6800g、発育に問題なし。首がすわる、音の方を向く。
6~7か月検診
7500g、発育に問題なし。寝返りをする、一人で座れる、人見知りをする、顔にかかったティッシュを自分でとる。
8か月現在
8000g、ハイハイ、つかまり立ち。好き嫌いを表現するようになり、あやすと良く笑う。発語はまだ少ないですが、これから増えてくるものと期待しています。
さいごに
今回胎盤異常が発覚した際に幸いだったのが、大学病院に通っていたことです。もともと万一何かあったときのことを考えて、大学病院での出産を希望していました。やはり大学病院なので、エコーも2Dでガイコツみたいな姿しか見せてもらえませんでしたし、入院時は豪華な食事もありませんでしたが、①急に異常が発覚して精密検査をするとなった場合に、病院を転々とせずに済む ②子供が生まれた後、万一異常があった場合、同大学病院の小児科で連携して面倒を見てもらえる この2点で大学病院での出産はメリットがあると実感しました。
私は幸い、難病を患いながらも、健康に娘が生まれてくれて、現時点まで順調に成長してくれています。今後何らかの異常が出てくる可能性は0ではありませんし、第二子を妊娠した時に同様の胎盤異常を発症する可能性も残っています。
ただ、ここまで健康で成長できている、我が子と自分自身を信じて、これからも1日1日を大切に過ごしていきたいと思います。
もし同様の悩みを抱えているお母さま、お父さま、誰にも相談できずつらい思いをしている方もいると思います。(私自身も、夫以外には生まれるまで誰にも打ち明けられませんでした)あくまで私の事例ですが、この記事が少しでも必要とする方の支えになれば幸いです。